チーズとワインは
洋食の、定番の食べ合わせ。
欧州では毎日のように夕食にチーズと
ワインをたしなんでいる人も多いでしょう。
チーズなどの乳製品は
カルシウムが豊富なので、
骨粗しょう症を予防する必要がある
高齢期の食材としては
骨のカルシウム源として重要です。
いっぽう、赤ワインに含まれる
ポリフェノールであるレスベラトールに
長寿遺伝子を活性化するという研究が
紹介されて以来、赤ワインには
認知症などの病気の予防効果が期待されています。
そんななか、赤ワインとチーズを
多く含む食事をしている中高齢者は、
ワインやチーズを摂取しない高齢者よりも
認知機能の低下が遅いようだという
米国アイオワ州立大学の食品化学部門の
オーリアル・ウィレット博士らの
研究チームの報告が話題を呼んでいます。
研究チームは認知機能の中でも、
流動性知能に注目しました。
流動性知能とは、新たな問題を解決し
未知のパターンを認識することに関わる
能力全般と定義されます。
いっぽう、結晶性知能は、
個人が長年にわたる経験、教育や学習などから
獲得していく知能であり、言語能力、理解力、
洞察力などを含む認知機能と定義されています。
40歳を過ぎると流動性知能は
低下する傾向にありますが、結晶性知能は
歳を取れば経験値が上がるので、
流動性知能の低下を
補完できると考えられているのです。
研究チームは、英国バイオバンク研究に参加した
1,787人の高齢者男女を対象に、
チーズなどの乳製品、ワインなどのアルコール類、
仔羊などの肉類など49品目の食品の摂取量と
流動性知能の関連性を
10年間にわたり追跡調査しました。
その結果、毎日チーズを摂取している
高齢者は、週に1回チーズを摂取している
高齢者と比較して、有意に流動性知能が
保たれていることが分かりました。
適量のアルコール摂取も
流動性知能を保つ傾向を見出しましたが、
特に赤ワインとチーズの組み合わせには
相乗効果が認められました。
さらに、毎週仔羊肉を摂取する高齢者も
流動性認知機能が保たれる傾向を認めましたが、
塩分摂取量が高くなると
その効果が相殺されることが分かっています。
研究チームは、チーズにはミネラル成分として
カルシウムが豊富なだけでなく、
神経細胞の代謝に重要なビタミンB12が
豊富に含まれている栄養学的な有益性を指摘。
また、赤ワインは長寿遺伝子を活性化すると
報告されているレスベラトールが
認知症を発症するモデルマウスで
発症予防効果が認められましたが、
摂取量には適量があり、赤ワインの効果は
1日量でグラス3-4杯が最適量で、
その量を超えるワインの摂取は
アルコール摂取による様々な障害のために
かえって死亡率が増加する危険性を指摘しています。
いっぽうで仔羊肉(ラム肉)に関しては、
ほかの牛肉や鶏肉に比べて、
オメガ3、オメガ6脂肪酸の含有量が高く、
神経細胞の細胞膜の流動性や
神経細胞間のシグナルの伝達効率に
脂肪酸の種類が関与している可能性を指摘。
さらにオメガ3やオメガ6脂肪酸は
羊の餌になっている牧草由来であることから、
グラスフェッド牛(牧草牛)にも
同様の効果が期待できる可能性を
ウィレット博士は示唆しています。
いずれにしても、
伝統的な欧州の食生活にも
高齢期の栄養学にかなった有益性が
今回の論文で再認識されました。
伝統的な和食にも、伝統的な洋食にも
栄養学的に優れた点があるので、和洋の食事を
バランスよく食生活に取り入れることが
認知症を予防するのに重要でしょう。